ベトナム:メコンデルタの町で人々の生活道を走るサイクリング

体力や旅行期間を問わず、半日程度の時間があれば誰でも気軽に楽しめるサイクリング・ツアーというのがあったらいいな、という思いから、実際に企画・体験してみました。場所はベトナム南部、メコンデルタの町カントーの郊外です。

そこに広がっていたのは、町中の賑わいとは違った生活の匂いです。例えるなら、ベトナム版サザエさんの一コマのような、その土地の人々にとってはごく当たり前の時間と言えるでしょうか。それがとても新鮮で、わくわくするような刺激に満ち溢れ、この先に広がる風景に対する好奇心がむくむくと膨れ上がりました。

肩を寄せ合うように並ぶ住宅や商店に挟まれた細い生活道をゆったり走ります。その道は、訪れる人を奥へ奥へといざなう迷路のようにも感じられました。視線 を先に向けると、散髪屋、八百屋、米屋、日用品屋、カフェ、食堂、狭い部屋にぎっしりゲーム機を並べた小さなゲームセンター、小学校、寺院など、日々の暮 らしに必要な小さくて濃密な世界が飛び込んできます。軽快なテンポでペダルをこぎ、その世界に引き寄せられるように分け入って行きました。

野菜や水産物を広げて路上で商いをしている男性は、きっとカントーの水上市場で仕入れてきた食材を並べているのでしょうか。日本の魚屋ではお目にかかれな い淡水の食用魚が並び、その横には熱帯モンスーンならではのさまざまなハーブや野菜が並べられていました。すぐ近くでは、路上で将棋のようなゲームに興じ る男たちの姿があり、近所をぶらつく人々がゲームの展開を冷やかしています。その生活リズムは、メコン川のゆったりとした流れのようで、自転車のスピード ともしっくりくる時の動きです。その動きにハイビスカスやブーゲンビリア、ココヤシなどの熱帯植物が彩りを添えています。

生活迷路のような道をどんどん進んでいくと、目の前で営まれている生活との距離が近いからか、次第に不思議な親しみの感情にとらわれていきました。初めて 来たにもかかわらず、久しぶりに帰省した地元の町のような、そんな錯覚を覚えたのです。そんな気持ちが、「また遊びに来たい町」の地図にカントーを加えて くれました。

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メコンデルタの町カントーで人々の生活道を走るサイクリング探検
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