バードウォッチャーが避けては通れない、晩秋の一喜一憂

早春の頃、あまりにも馴染み深いツバメという名の夏鳥の姿が我々の目に飛び込んできます。森に行けばキビタキ、オオルリ、コサメビタキといった美しい夏鳥たちが歌い、我々は今年も夏鳥を楽しめる季節が来たぞと気合を入れるのです。
では、冬鳥たちが飛来し始める晩秋の頃はどうでしょうか?馴染み深い冬鳥という点から言えば、身近な公園の池にやってくるカモたちです。公園の池のカモたちが、みるみるうちに増えてくる様子や、ハクチョウ(コハクチョウとオオハクチョウ)初飛来の話題が季節の便りとしてニュースでも扱われています。
ただし、バードウォッチャーに人気がある冬鳥はそれらとは違っていて「赤い鳥」と称される小鳥たちなのです。ヒレンジャク、オオマシコ、ベニヒワ、イスカ、ウソなどがその代表で、体全体が赤かったり、赤いワンポイントが入っていたりと、赤いという共通点があるのです。
これは単純に美しいという意味もあるのでしょうが、雪景色に最も映える色が赤だからかもしれません。しかし、これらの「赤い鳥」たちは、どういうわけか毎年必ず飛来するわけではないのです。それだけにバードウォッチャーたちは晩秋になると一喜一憂するというわけです。

我々バードガイドは基本的には毎年、ほぼ同じ時期に同じ場所に出かけます。実は昨年の今頃は、我々はもちろん、多くのバードウォッチャーたちが首をかしげ、悩む日々だったのです。ここまで書けば既にお分かりかとは思いますが、とにかく冬鳥が全く見られなかったのです。いち早く飛来する日本海側の離島も、日本海側に位置する森も、そしてそれらが飛来してくるはずの市街地にも・・・。そしてその傾向は改善されることはなく春先まで普通に見られるはずの冬鳥たちに出会うことはなく、言うまでも無く人気のある「赤い鳥」にも出会えませんでした。
しかし、今年の晩秋はテンションが上がり切ったような日々が続いています。今年の秋も昨年同様日本海側の離島、そして日本海側に位置する森と巡りましたが、昨秋とはその様子が全く違っていたのです。もし「赤い鳥予報」をしても良いというのであれば「晴れ」いや、「快晴」といったところでしょうか。冬鳥の飛来の指標ともいえるツグミ、マヒワ、アトリは群れを成し、その波は山地の林から既に市街地にまで押し寄せています。
バードウォッチングにはさまざまな格言がありますが、今冬は「冬鳥は見られる時に見るべし!」が当てはまりそうです。皆さんのご自宅の近くにある小さな公園、ちょっとした林、そしていつも歩いている散歩道でも、今冬はバードウォッチャー憧れの「赤い鳥」に出会える可能性が高いのです。

さて、今年の冬は忙しい冬になりそうで今から楽しみです。ただあまりにも気合が入り過ぎるのもいけません。「野鳥は殺気を感じて逃げて行く」という格言もありますから。
さて、早いもので今年もあと僅か・・・皆さんどうか良いお年をお迎えください。