占い好きに見せたいアフリカの呪術師

今日は、広大なアフリカ大陸で体験した占いの話です。
舞台はカメルーンという国の北部、マンダラ山脈と呼ばれる山間部に暮らす人々のお話です。ここには、世にも珍しい「蟹占いの呪術師」がいます。「世界一の奇観」とも評され、不気味な形をした巨大な奇岩が屹立しているルムスィキという村があり、「マタカム」や「カプシキ」と呼ばれる人達が住んでいます。後世 になって渡来してきた宗教・文化に影響を受けることなく今でも土着の信仰に依って生きている人々です。
古来より製鉄文化を生業として生きて来た人々で、古代の日本でも行われていた「たたら製鉄」と呼ばれる初期の製鉄法による鉄文化を持っていました。今は昔ながらのやり方ではありませんが、暮らしぶりは何百年も変わる事のない、自給自足を主とした素朴な村です。

さて、その鉄作りの人々が何故占いと関係あるかと言うと、今でいう占い師という職業は、どうやらこの地域では鍛冶屋の事を指していたそうなのです。鍛冶 屋=錬金術師=占い師=呪術師、呼び方は色々ですが、自然の砂や岩から鉄を精製する技術を持っている家の人間は呪術師と同じように扱われ、村の人々から敬 意を持って接せられていたようです。呪術師なんて言うと、おどろおどろしいものを想像してしまいますが、村の人々にとってはご意見番と言ったところでしょ うか、冠婚葬祭、作物の収穫、隣人とのもめ事など、何でもとにかく相談する相手です。

その相談ごとに対して、ズバッと結論を下すのが前述の「蟹占い」。一度だけ見た事がありますが、読んで字の如く、一匹の蟹を壺の中に放り込み、その蟹の動 きを読みます。あらかじめ壺の中には、変な形の石やら、動物の骨やら、色んなものが無造作に突き刺さっています。その壺の中に宇宙を表現し、その中を歩く 蟹の足跡を読んで、結論を下すのだとか。私が、当時3年以内に結婚出来るかどうかと占ってもらったところ、「お前は、2年以内に黒い水の夢だ」「人生で、 最も大切な事は鼻だ。」と、まるでよくわからない事を言われた事があります。もう通訳の若者も困惑しきり。

写真のお爺さんがその蟹占いの呪術師です。確かに、得体の知れない爺さんでしたが、霞みでも食べて生きているのでは?と思わせる仙人然としたその佇まいと 雰囲気は、相対していても不思議と落ち着くものでした。めったに会いに行けるようなところではありませんが、変わった占いがお好きな方は、呪術師のお爺さ んがご存命のうちに、是非。

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