熱帯の森に棲む極楽鳥の仲間たちの「デートスポット」

今日は世界で最も情熱的な鳥、熱帯の森に棲む極楽鳥の仲間たちの「デートスポット」をご紹介致しましょう。

場所はパプアニューギニアの首都、ポートモレスビーから車で1時間、バリラタ国立公園の森に設けられた「合コン会場」。夜明け早々の朝6時、赤い飾り羽を振りながら、一羽のアカカザリフウチョウ(オス)が現れます。ほど良い長さの横枝に止まると、やおら自慢の羽を広げ、喉を震わせ「フォッフォッフォッフォ~」と鳴き始めます。するとどこからとなく別のオスが隣に止まり同じ仕草を、また別のオスがやってきて羽を広げて踊りながら雄叫びをあげるのです。

やがて彼らの情熱的なダンスに誘われ、飾り羽のない地味な仲間(メス)が複数やってきて遠巻きに「合コン会場」を囲みます。するとオスたちはさらに羽を広げて喉を震わせ、我こそがこの森一番のイケメンだと争いはじめます。「フォッフォッフォッフォ~!」「フォッフォッフォッフォ~!」…10分前までは静まりかえっていた森は今や数多くのアカカザリフウチョウたちによる、狂ったようなラブコールの嵐です。

彼らの求愛ダンスと雄叫びが1時間ほど続き、我々の目から見てもこのオスの飾り羽が一番立派で、ダンスも一番上手だろうと感じた頃、一羽のメスがそのイケメン君の傍らに飛んできて寄り添います。すると他のメスたちも後に続くのです。彼らの合コンルール、それは最も優れた一羽のオスが全てのメスを総取りという過酷なもの。メスに囲まれたイケメン君は勝ち誇った様子で再び羽を広げ「フォッフォッフォッフォ~!」、そして恋に落ちたメスたちを携えて深い森の中へ消えて行きます。残されたオスたちは羨望と嫉妬の眼差しで彼らを見送った後、「フォッ~フォッフォッフォ…フーッ」とため息交じりに羽を閉じ、次の開催日でのリベンジを誓うのです。

赤道直下の鳥の繁殖シーズンは長く、彼らの婚活は4月から10月頃まで行われます。森の傍らでは未だ若いオスが未来のモテ男を目指し、求愛ダンスの練習をする事も。明日はバレンタインデー。女子からのチョコレートをひたすら待っているだけの、草食系と呼ばれる日本の若い男性には、ぜひ見て学んで欲しい「デートスポット」です。

(注:彼らの合コン会場を訪ねる際には、鳥の生態を良く知ったバードガイドと共に行き、決して脅かさないよう出来るだけ遠くから見守ってあげて下さい。恋の邪魔は禁物です。)