子どもたちに見せたい自然の息吹

バードウォッチングツアー専門旅行会社、ワイバードの中野です。

バードガイドの仕事もはや13年。ツアーに参加される方は年輩の方が多く、ほとんどが私より年上の方ばかり。ガイドを通じ、いったい何人の先輩方と触れたことになったのだろう。皆目見当もつきません。

思えば、このようなガイドを私は大学生の頃からやっていました。当時私は、YMCAという団体でボランティアリーダーをし、そこで小学生や中学生を相手にしたバードウォッチングキャンプを担当していたのです。野鳥というものをほとんど知らない子どもたちを、まだ薄暗い早朝4時に起こし外に連れ出します。外では‘フィー、フィー’、‘キョキョキョキョ……’とヨタカやクロツグミといった夜行性の鳥たちが鳴いています。東の空が白んでくるとやがて彼らは息を潜め、代わって、カッコウやアカハラ、キビタキ(写真)などの日中活動する鳥たちが一斉に鳴き出します。林は野鳥のコーラスに包まれ、初めて体験する子どもたちも、この素晴しい音楽を静かに聞き入っていました。

子どもたちが目を輝かせたのは、それから直ぐのこと。今、そのさえずりを耳にしていた野鳥が、私がセットした望遠鏡を介して目の前で見えるのです。野鳥は人間の姿を見ると直ぐ逃げてしまい、決して手の届く距離で見ることはできません。そんな野鳥が、羽毛の1枚1枚まで鮮やかに見られる距離で見えているのです。テレビの世界ではありません。どの子も望遠鏡を覗いた途端、宝物でも探し当てたように目をキラキラ輝かせていました。

私は現在、3人の男の子の父親ですが、息子たちはテレビゲームやカードゲーム、DSといったインドアで遊ぶゲームに夢中でなかなか外に出ようとしません。そこで私は機会あるごとに外に引っ張り出し、野鳥だけでなく植物や昆虫など、とにかく子どもたちが自然の物と触れ合う時間を作っています。その中で感動できるものを一つでも二つでも見つけ体験してほしいと願っています。あの時、キャンプに来ていた子どもたちも、今や親になっている年齢。彼らの子どもに、その時の感動を伝えてくれているでしょうか……。

中野泰敬の「新・今週の鳥」http://www.ybird.jp/bird/bird.html