ツルに襲いかかる鳥インフルエンザの脅威

ツルに襲いかかる鳥インフルエンザの脅威

鹿児島県出水市に於いて、鳥インフルエンザが発生。次第に猛威をふるいはじめました。11月29日に陽性判定されたマナヅルから始まり、これまでにナベヅル4羽、マナヅル1羽、オナガガモ、ヒドリガモ、カルガモがそれぞれ1羽ずつ、鳥インフルエンザで絶命した事が確認されています。

出水平野の水田地帯は日本一のツル越冬地。年によっては6種ものツルが飛来、なかにはヒマラヤ山脈を越えてやってくるアネハヅルのような珍しい種も含まれます。しかもその数は増え続け、今冬は推定で15,000羽を越えました。特にナベヅル(写真)は世界中に生息するうちの9割が、マナヅルは5割が出水で冬を越します。従って、もしこのまま鳥インフルが猛威をふるい続ければナベヅルは絶滅危惧種になる恐れもあり、越冬地の一極集中化が種の保存にとって好ましくない事がよくわかります。

実はそんなツルを呼び込むことによって地域振興を図ろうとしている自治体があります。山口県周南市八代(写真)。かつてここには300羽を越えるツルが越冬していましたが、戦後の農地整備などの環境の変化により激減、熱心な保護活動をはじめましたが、2年前には9羽だったツルが今年は6羽しか来ていません。いくら地域の人々が環境を整え、熱心に誘致しても、冬を過ごす場所を選ぶのはツル自身。呼び戻す事がいかに難しいかが伺えます。逆に諫早湾干拓事業による堤防建設で新たに生まれた農地に、数年前からツルの姿が見られるようになるなど、予期せぬ場所が越冬地として育つ可能性もあります。

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弊社でも毎年1~2月にツルの越冬地にて観察を行なうツアーを実施。その記録そのものが毎年の定点観察データとなっています。日本の冬の風物詩ともいえるツル。いつまでもその優美な姿が見られることを願うばかりです。