ポタラ宮の前で大コルシェー

チベットの伝統ダンス「コルシェー」をご存知だろうか?
大勢で円くなって踊るもので、ラサを訪れたことのある方ならどこかで観たことがあるかもしれない。
なんとそれが今、毎晩ポタラ前で繰り広げられている。

夜8時半ぐらいに、ポタラ広場に行ってみよう。若いチベタンが過半数、夜の広場を占拠している。彼ら、彼女らは、このポタラ広場に、夜な夜なコルシェーを踊りに来るのである。

コルシェーは、昔の日本の盆踊りに構造は似ているかもしれない。みな同じ所作で、円環になって踊りながら少しずつ進んで行く。違いは、ややテンポが速いこと。そして、それよりもなによりも(「伝統の心」を失ってしまったと年配のチベタンによく嘆かれる)若者たちに大変な人気なのである。特に女性がノリノリである。

このポタラ宮周辺での大コルシェーの出自だが、地元政府の「文化政策」の反映であろう。広場に流れる曲を注意してよく聞いてみる。気のせいか、現代ラサを愛でる漢語の歌が多いような気がする。そしてチベットの曲も、チベット人があまり盛り上がり過ぎないように、微妙な選択がされているような…。

それでも、チベット人好みのテンポの曲が始まるや否や、彼女たちは環のなかにどんどん吸い込まれていく。それは、なんともすごい光景である。大勢のチベタン美女が一度に吸い込まれる光景―。

多くのチベット人にとって、踊りと歌は(先進国の場合のように)「趣味程度」に終わるものでは決してない。もっともっと心の深いところで彼らを結びつけ、生命を与えるような、極端かもしれないが、非常に宗教的な性格をさえ帯びてくるところがある。
もちろん踊りにも地域差や好みの差はあるのであるが、このコルシェーという、バラバラな個人を(一時的にでも)全体へと昇華・躍動させるようなものを目の前にすると、伝統文化というものの力を感じないわけにはいかない。

もしラサに来られたら、夕食後の散歩帰りにでも寄ってみてはいかがだろうか?
飛び入りで踊ってみてもいいだろう。

ただし、ラサの標高は高いので、踊りすぎにはご注意を。

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