金門島

先月末、台湾に行ってきました。弊社のツアーの目的は野鳥。従って、一般の観光旅行ではあまり足を運ばない場所へ訪れる事が多く、台湾…と言っても台湾本島ではありません。台北から国内線で約1時間、中国大陸から僅か2㎞という距離に浮かぶ「金門島」のお話しです。
金門島は12個の島々から成り、中心となる「大金門島」 は瀬戸内海に浮かぶ小豆島と形も大きさも似た島。
最近でこそ、観光客にも開放され、対岸の厦門からの定期航路も開設されましたが、過去には多くの人の立ち入りが厳しく制限され、対中国との軍事拠点とされていた島です。今でも当時の戦車や防空壕といった負の遺産が数多く見受けられ、砲弾を受けて大きな穴の空いた家が残っています。また島内の至る場所に地下通路が張り巡らされており、ここがかつて最前線の戦場であった事を思い知らされます。しかし、島の人々はそれらの遺産をそのままで終わらせずに、あるビジネスへと育て上げました。その地場産業とは?

実は包丁などの刃物です。

島のあちこちに点在する工場では、中華包丁からアーミーナイフまで、様々な種類の刃物が作られており、その切れ味はプロも絶賛する一級品。今では島内を代表する観光スポットに育ち、多くの観光客がお土産に買い求めます。
そして驚くのは、これだけの刃物を生産する原材料が、島に数多く打ち込まれたミサイルの残骸。実にミサイル一発で数千の包丁が生産出来ると言います。負の遺産であるミサイルを利用して島の文化を創るという、その柔軟で逞しい発想には、我々も見習うべきものがあるでしょう。

そんな歴史を持つ島で、私たちはヤツガシラ、クロツラヘラサギ、アオショウビン、ナベコウ等、数多くの野鳥たちと出合い、その美しい姿を楽しんだことは言うまでもありません。